6.新「川の手/海の手」論 ―下町の新「山の手」―

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 水面きらめく夕暮れの隅田川。その流れのちょうど中程(中央区佃島)に、「大川端リバーシティ21」はある(写真(1))。石川島播磨重工業の工場跡地に、バブル期の1980年代終わりからマンションが建ち始め、今や超高層の7棟を含む10数棟に4千世帯・1万人以上の人々が生活している。夜は、すぐ隣の古くからの街並み(作品No.13の「佃」)と運河の川面とによって、光が織りなす高・中・低の「三層構成の夜景」も美しい(写真(2))。
 写真(3)は、品川駅港南口の再開発によって、2003年に出来た「品川Vタワー」という超高層マンションである。丸みを帯びたV字形のフォルムが特徴的で、手前の屋形船が繋留する運河の景観と好対照をなしている。ここも、元は旧国鉄の貨物ヤード跡地で、「品川インターシティ」(1998年)や「品川グランドコモンズ」(2003年)が次々に完成し、今や10棟以上の超高層のオフィスビルやマンションなどが建ち並ぶエリアとなっている。
 東京の地域区分は、都心から西郊に続く高台に広がりホワイトカラーや経営・専門職層が多く居住する「山の手」と、東側の低地に広がりブルーカラーや職人・小商人層が多く居住する「下町」の二分法で語られることが多かった。「下町」は、隅田川や荒川の流域や東京湾に注ぐ河口部と重なることから、時に「川の手/海の手」とも呼称される。
 「大川端リバーシティ」も「品川Vタワー」も、共にこの「川の手/海の手」に立地する。だが、周辺の空間とは明らかに異質であり、それ自体が景観的にも関係的にも「租界」と化している。つまり、「川の手/海の手」内に「山の手」が入り込み、そこを「目に見えない線」で区分する現象が起こっているのである。このような地域を、我々は「新川の手/海の手(=川の手/海の手の新山の手)」と呼ぶことにしよう。
 「新川の手/海の手」の高層マンションは、1)好立地(東京駅までの所要時間は大川端15分、品川10分)、2)好眺望(都心部の夜景も一望できる) 、3)生活環境の充実(居住環境の良さに加えて、商業・教育・病院・文化等の周辺環境も抜群) 、4)水辺の癒し空間(ウォーターフロントの安らぎ)、そして5)高所得階層を中心とする居住者、といった特徴を持ち合わせている。利便性と環境の「特権的」とでも言うべき優位性ゆえ、「億ション」が多いにも関わらず需要は高い。
 「新川の手/海の手」は、富裕層を中心とする「都心回帰」を促進させると共に、「都心再生(大規模な再開発)」プロジェクトを下支えすることにもなるのである。
写真撮影者:(1)(2) 日本大学4年 梶山剛志 (3) 日本大学3年 小澤一憲
(1)2004年1月8日(木)16時頃 江東区永代1丁目にて撮影
(2)2004年1月1日(木)17時頃 中央区佃1丁目にて撮影
(3)2004年7月3日(土)15時頃 品川区北品川1丁目にて撮影

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