20.深川江戸前屋形船 ―水路に漁師の残り香―

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 深川巽橋すぐ脇の小さな水路に、屋形船が停泊している。船を所有する船宿「あみ亀」の先々代は投網で名を馳せた漁師であり、屋号の「あみ」はそこから取ったものである。
 江戸時代の東京湾は、単位面積当たりの漁獲高日本一を誇っていた。深川も水運や商人の街として栄えると共に、ハゼや鰻の漁場を土台とした「江戸前」文化が根付く土地でもあった。しかし、1962年頃から東京湾の埋め立てが本格化すると、漁場は失われ当時400人近くいた漁師達の大半は漁業補償を受け、陸へ上がることとなった。
 戦後の経済成長の中で、水路埋め立てによる道路建設等で発展してきた深川。屋形船では、獲れたての魚介類と料亭の味、水上の景色と専属コンパニオンまでを同時に楽しむことができる。江戸前文化と深川の街の特徴を合わせ持つ水路と屋形船は、水辺を忘れられない元漁師を水上での生活に辛うじて繋ぎ止めてくれるものでもある。永代通りの喧騒に背を向けた屋形船「第十亀丸」は、隅田川を目前に臨み、ぷかりぷかりと浮かんでいる。
<写真撮影者:社会学科4年 岡田和之>
2005年7月11日(月)12時頃
巽橋(江東区永代1丁目)にて撮影

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