2.下町社会の墓標? ―ジェントリフィケーションとコミュニティの分断―

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 橋の向こうにそびえ立つのは、中央区佃島の「大川端リバーシティ21」。東京駅の八重洲口から南東方向へ僅か2キロに位置し、その間には、京橋、日本橋、銀座、茅場町、八丁堀、入船などの地区があるというロケーション。都心にこれほど至近の距離にありながら、地下鉄有楽町線(月島駅)やJR京葉線(越中島駅)が開業するまでは交通の便が良くなかったことも手伝って、佃・月島界隈は開発の波をあまり受けることなく、下町情緒もたっぷり残っていた。しかし、1980年代以降、大川端地区では大規模なウォーターフロント開発が進み、今や高級高層マンションが林立する街に一変した(リバーシティは90年代初頭に完 成)。居住者の多くが高学歴・高所得の専門・技術・管理職層で占められ、下町らしからぬ別世界が形成されている。ここは、老朽化し荒廃した大都市インナーエリアを再開発によって高所得層の居住地に転換していく「ジェントリフィケーション」の、日本(東京)における典型例と言っていいだろう。
写真原作者:日本大学4年 稲垣聡
1998年8月20日(木)
中央区・佃大橋にて撮影

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