26.貴女と貴男の社交場 ―虚構が売り買いされる街―

1997_26 貴女と貴男の社交場.jpg
 夜の新宿・歌舞伎町の正面を抜け路地裏に一歩足を踏み入れた途端に、こんな光景に出くわした。偽ブランド品とおぼしきバッグ類が売りさばかれ、その上にはホストクラブの看板が光る。「ニュー愛」だの「貴男と貴女の社交場」といった文字が、踊っている。大都市の盛り場には、一時に人間が過度に集中するため、「個」としての顔が隠されてしまう。「ストレンジャー(見知らぬ人々)」 同士の集まりは、異質性や匿名性を高め、価値基準をバラバラにして社会規範を骨抜きにする。そこでは、「何が真実か」という絶対的(一元的)な物差しは通用しない。フィクション(虚構/偽物)であってもパフォーマンスとしてまかり通り、商品となって売り買いされる。
 キッチュ(まがいもの)やホストクラブが成り立つのは、それを求めるニーズが集合化するから。大都会では、金さえあれば何でも手に入る。フィクションだろうと、愛ですら。
写真原作者:日本大学4年 貝塚紀雄

プロジェクト