5.近くて遠い2人 ―ゲームセンターのメディア性―

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 子どもが2人、コンピュータ・ゲームに熱中している。物理的には互いに隣り合わせに座っているが、直接対面しているわけではない。両者を介在しているのは対戦型ゲーム機であり、そこには「電子回路による距離」が存在する。もしかしたら、心理的にも「遠い」関係なのかも知れない。
 コンピュータが日常生活の奥深くまで入り込んでいる現代、私たちは「電子の世界」で様々なヴァーチャル・リアリティを体験し、メディアの数だけのリアリティを見出すようになっている。M.マクルーハンは、「電子メディアを介して、我々の体は拡張している」(『メディア論』)と言ったが、電子回路に絡めとられている私たちは、身体の拡張経験と同時に、絶えず「自閉」しようとするベクトルも内側に用意するようになっているのではないか。
写真原作者:法政大学3年 高橋俊彰

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