7. 魔法の電気ブラン ―下町の社交bar―

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 浅草一丁目一番一号。中央で異彩を放つのは、神谷伝兵衛が1880(M13)年に創業した日本最古のバー「神谷バー」である。浅草に最も長く佇む鉄筋コンクリート造りの建築物で、2011年に国の登録有形文化財に指定されている。
 店の雰囲気は、曜日や時間帯によって大きく変わる。週末は浅草見物の観光客が多く訪れるが、平日の午後になると常連客で賑わい、大きいテーブルを相席にするスタイルでビールをチェイサーに電気ブランを酌み交わす「下町の社交場」と化す。電気ブランは、アルコール度数が高いブランデー・ベースのカクテルで、創業期からの名物だ。すぐ酔ってしまうためか、「1人2杯まで」という警句(?)が常連客の間に流布しているようである。
 明治の頃、珍しくて高価だった洋酒を普通の人でも気軽に飲めるようにと生み出された電気ブラン。1杯270円(大正期10銭)のモダンなカクテルは、いかにも浅草らしいハイカラだったビルと共に時代の波を乗り越え、今でも多くの人々を惹きつけている。
写真撮影者:日本大学4年 高島智広
2015年7月30日(木)14時01分
神谷バー(東京都台東区浅草1-1-1)の前にて撮影

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