19.ナンバー1・オンリー1の時代 ―75年の月日を重ねる中で―

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 写真は、2002年3月31日に閉園した向ヶ丘遊園への来園者を運んでいたモノレールの残骸である。向ヶ丘遊園は、1927(S2)年に小田急線の開通とともにオープンし、今年で75年を迎えるところだった。
 大正から昭和初期、主に私鉄沿線の住民を念頭に置いた郊外型遊園地がブームを呼んだ。向ヶ丘遊園もその1つである。しかし、戦後の高度経済成長に伴う巨大都市化と交通網の発達によって、「沿線」という空間的枠組みが大幅に薄れ、広範域に渡ってどこへでもすぐに行ける時代が到来した。その結果、郊外型遊園地は他にはない強力な「ウリ」を持つ、すなわち「ナンバー1」や「オンリー1」でなければ生き残れなくなっていった。ディズニーリゾートや富士急ハイランドが人気を集める一方で、向ヶ丘遊園のようなあまり特色のない遊園地は、その幕を閉じざるを得なかったのである。
 時代という風によって錆付いてしまったこのモノレールも、今年中に全てが撤去される。
写真原作者:日本大学2年 川島秀和
2002年6月29日(土)
向ヶ丘遊園地付近(神奈川県川崎市多摩区)にて撮影

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