18.大きなサービス小さな不便 ―京急よ何処へゆく―

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 京浜急行線・京急川崎駅。案内板を見ると、ラッシュ時でもないのに1分毎に3本の電車がやってくる。行先も別々。中央の二人は時刻表に戸惑っているようだ。一体なぜ?
 京急は、1899(M32)年に開業した関東で最も古い歴史を持つ私鉄である。品川-横須賀間で競合するJR(旧国鉄)に勝つため、一分でも速く、一人でも多くの乗客を東京に/から運ぶ試行錯誤を繰り返した。そして、1998年に羽田空港への乗り入れを開始した結果、今日の5路線、5列車(普通・急行・特急・通勤特急・快速特急)、私鉄4社との相互乗り入れという形態となった。だが、こうした努力の後に残ったものは、詰め込まれたダイヤと複雑化した行き先・運行だったのである。激しい乗客獲得戦争が招く行き過ぎたサービスの供給が、乗客のニーズや利用のしやすさとの間に小さなズレ(不便さ)を生んでいる。
 過剰な競争とサービスの蔓延が、本当に必要なものを分かりにくくする。そんな現代大都市の一断面を透視させる場面が、この写真には写り込んでいる。
写真原作者:慶応大学3年 杉坂春奈
2003年6月30日(月)10時過ぎ
京浜急行線・京急川崎駅ホーム(川崎市川崎区)にて撮影

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