12.都心の縁日 ―フリーマーケットにみる縁(えにし)の結ばれ方―

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 「これいくらですか。」
 「ああ、千円だよ。」
 「えー、もっとまけられない?」

 そんなやりとりが聞こえてきた。代々木公園で、梅雨時の晴れ間をぬって開かれていたフリーマーケットでの一コマ。そこでは、「東京人」の人間味あふれる交流が展開していた。
 都市に特有な人間関係の特質は、一次的接触(フェイス・トゥ・フェイスの親密な接触)に代わる二次的接触(非人格的・非親密的・形式的・皮相的・打算的な接触)の優越であり、アメリカの都市社会学者ワースは、これを「アーバニズム」という概念で説明した。「東京人」も、親族や近隣の結合の弱化、主体性の喪失、無関心の態度など、「都市に特徴的な生活様式」の諸特徴を色濃く有している。しかし、現代の洗練された商業では味わえない解放感に満ちあふれたこのフリーマーケットでは、人と人との心のふれあいが大切にされる。商品と貨幣との単なる交換を越え、売る側の人たちの思いの詰まった品物を介して、人々が出会い交流を深める。そんな縁の結ばれ方もあるのだ。
写真原作者:法政大学3年 高木登己

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