8.電車と一緒におはよう、おやすみ―暮らし続けて42年―

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 部屋の灯りが漏れる何の変哲もない夜の団地。しかし、よく見ると下には電車がずらりと整列している。1968年に開設された都営地下鉄三田線西台駅に隣接する志村車両検修所と、その2年後に車庫上部の有効活用のため人工地盤と共に建てられた公営住宅だ。車庫の上に建つ団地は、他に類を見ない。     
 検修所では主に、早朝(4:30頃)に試運転作業、日中に車両の点検作業が行われ、終電後(00:25)には回送電車が入庫する。後藤ゼミが団地の居住者36人に行ったインタビュー調査によると、「音(試運転のベルやエンジン音)が聞こえる」と答えた27人のうち25人は「生活をする上で気にならない」と答えた。また、居住歴20年を超える者は21人、60歳以上は31人と高齢化も進む。駅近という利便性や低廉な家賃、そして「慣れ」が彼らの耳栓となったのだ。
 この異様な団地には、高度経済成長のまっただ中の人口急増期に量産主義に走らざるを得なかった当時の東京が、ある意味で“最も露骨に”表象されている。
写真撮影者:日本大学4年 小林大輔
2012年7月18日(水)21時00分
西台住宅5号棟(東京都板橋区高島平9丁目1)にて撮影

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