10. 江戸城と皇居の鎮守の社・日枝神社 ―伝統性と現代性の融合―

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 美しい社屋と境内に集まる人々。神田祭、深川八幡祭と共に江戸三大祭に数えられる日枝神社の山王祭の一コマである。とは言え、神輿や山車の大行列が都心を練り歩く「神幸祭」は隔年催行で、「茅の輪くぐり」という地味な神事の最中なのだ。
 社屋の後ろ側にそびえ立つプルデンシャルタワーが圧倒的な存在感を放っているが、それもそのはず、神社は皇居や国会議事堂のすぐ裏手、東京のど真ん中にある。江戸時代にあっては、江戸城の鎮守、徳川将軍家の産土神として格別な地位を与えられていたが、江戸城が皇居となり天皇が主となってからは、皇居鎮護の神社へと変質していった。
 江戸から東京へ、徳川将軍家から天皇家への大転換(断絶)を経てもなお、日枝神社は東京の心臓部に鎮座し続け、長くて大きな階段(山王橋)に並置された現代的なエスカレーターが参拝客を出迎えてくれる。江戸の代から受け継がれている「伝統性(権力が与えた真正性(オーセンティシティ))」と東京の都心空間が体現する「現代性」とが融合する、希有な神社なのである。
写真撮影者:日本大学4年 ヨハン・クリスチャン・カン
2015年6月14日(日)15時16分
日枝神社(東京都千代田区永田町2-10-5)にて撮影

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