24.明文化された暗黙の了解 ―モラルハザードの背景―

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 「路上にゴミ等を捨てたら2万円以下の罰金」。1998年4月、東京都渋谷区でも「ポイ捨て禁止条例」が施行され、10月には罰則規定まで定められた。「路上にゴミを捨ててはいけない」など、誰しもに備わっているべき「常識」の範疇に含まれることだ。しかし、それを法令で定め、罰則規定まで用意しなければならない現実が、ここにある。「暗黙の了解」事項を「明文化」しなければならない逆説。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」式の不道徳。実名がほとんど隠されてしまう都会で、規範を守らない「みんな」(無数の匿名他者) が日常的に存在すると、「内なるモラリティ」が麻痺しやすくなる。「みんな守っていないのだから、自分だけ守ったってしょうがない」と思い始めたら、もう後は坂から転げ落ちて行くだけ。金融機関や政治家の倫理観の喪失が問題となっているが、それは別世界のことではなく、私たちの中にも起こっている。
写真原作者:日本大学4年 福嶋由美
1998年7月10日(金)
渋谷のセンター街入口にて撮影

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