6.“聖”と“性”の織りなす街 ―商店街が放つ人寄せの秘技?―

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 人通りのない路地に、千代田稲荷神社と右から書かれた7つの赤い提灯が見える。右へ視線を移すと、MOTIというラブホテルの看板がある。千代田稲荷は江戸城の守護神として築城時に勧請され、その後、渋谷宮益坂に江戸城から遷座されたことを受けて「千代田」の名前がついた。関東大震災後には、宮益坂から道玄坂の百軒店(ひゃっけんだな)商店街へ移された。
 百軒店商店街は、大震災の復興計画に基づき被災した有名店や老舗を誘致して生まれた街で、渋谷の中心として栄えた歴史を持つ。ところが、西側に隣接する円山(まるやま)町が、1980年代以降に花街からラブホテル街に急変していく中で、百軒店にまで累が及んでしまった。
 商売繁盛を願う“聖”なる空間と外部からの集客を生む“性”なる空間が隣り合わせに存在するという構図は、実に興味深い。商店街が大繁盛していた頃であれば決して相容れなかった「聖」と「性」が相互作用し、折り合っているのである。あたかも、この商店街の延命をはかる社会的装置として機能しているようである。
写真撮影者:日本大学3年 田邊翔
2014年7月5日(土)16時06分
千代田稲荷神社(東京都渋谷区道玄坂2-20-8)にて撮影

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