1.銀座の“純和風” ―オンリーワン、歌舞伎座―

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 鉄道が開通した新橋(今の汐留)駅の目と鼻の先に位置する銀座に、ガス燈の立つ赤煉瓦街が建設されたのは1874(M7)年。銀座は、欧化の最前線基地としてスタートした。そんな銀座に、たった1つだけ純和風の建物が存在する。そう、ここ歌舞伎座だ。
 1888年に設立された当初、外観と内装は洋式だったが、1911年に和式に改築された。現在の姿になったのは、明治生命館(丸の内)などを手がけた岡田信一郎の設計によって建てられた1924年のことだった。山の形が湾曲した「唐破風(からはふ)」と呼ばれる正面入り口の屋根が特徴で、国の登録有形文化財にも指定されている。
 でも、どうして銀座で純和風はここだけなのだろうか? 歌舞伎と歌舞伎座は、欧米の猿真似ではない日本独自の文明(ナショナル・アイデンティティ)の証として位置づけられ、創り上げられた。“新たな伝統”が、銀座を舞台に発見・発明され、発現したのだ。
 これは、銀座が文明開化の街だからこそ成立する“逆説的な事象”なのである。
写真撮影者:日本大学4年 石田晴香
2006年5月2日(火)14時30分頃
歌舞伎座(中央区銀座4丁目)にて撮影

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