27.まちなかセールス ―匿名ゲーム―

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 「すいません、ちょっと時間いいですか?」。若い 女性が一人で繁華街の大通りを歩けば、若い男性が次々と化粧品やエステの勧誘を行い、たちまち「まちなかセールス」が始まる。新宿や渋谷でよく見かける光景である。大勢の人間が局地的に集中する繁華街だからこそ成り立つこの商売。声をかける側(=売り手)は、単に人が大量に集まっていることだけを理由にセールスを行なっているのではなさそうだ。大都市の匿名性に身を隠せば、扱う商品の「いかがわしさ」を薄めさせることだってできる。しかし、同時に声をかけられる側も匿名でいられるので、多くの場合は引っかからない。写真の女性のように、身を引くことで警戒感をはっきりと表せば、まずそこでお終い。でも、その場に立ち止まったり、歩きながらでも話を聞いてしまうと、術中にはまってしまう。
 匿名vs.匿名のこのゲーム、敗者のリスクはあまりにも大きい。
写真原作者:日本大学4年 板山利恵
1998年6月4日(木)
新宿・新宿通りにて撮影

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