2.神楽坂花柳界のジレンマ ―「見えない」価値の行方―

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 神楽坂に残る石畳の路地に、料亭がポツリポツリと点在している。
 住民主体のまちづくり活動が盛んな神楽坂は、大規模開発を避け、区画や建物の保存で一定の成功を納めてきた。だが、街の魅力を下支えしてきた神楽坂花柳界が、経営難による料亭の減少を主要因として大変化しつつある。料亭とは、芸者を呼ぶことのできる営業権を持ち日本料理を提供する高級・高価な店を言うが、1959年に89軒あった登録料亭は、たった9軒のみ。料亭は今、限られた人にのみ利用されていた空間を万人に開放するか否かで揺れているのである。9軒のうち3軒が「一見様お断り」を捨てたが、今後も貫くと明快に答えた店も3軒あった(ゼミ調査)。一般客の引き入れは新規客を開拓する利点を生む一方で、信用・信頼・安心・威信などを既存の客や店の双方から奪いかねない。
 「見える」価値の保存とは裏腹に、「見えない」価値の継承は行き詰まっている。趣のある石畳、楽しく食事をする大勢の庶民の前で、たじろぐ神楽坂の姿が見え隠れする。
 
写真撮影者:日本大学4年 御堂真則
2006年6月24日(土)13時頃
新宿区神楽坂4丁目にて撮影

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