27.キッカケは“Merry” ―でも、笑顔は観るもの?―

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 あなたは、この若い女性たちのように思いっきり口を開けて笑うことがありますか?
 “Merry”は、人々の笑顔を撮影し展示するアートプロジェクト。震災後の神戸、テロ1年後のNYの次の舞台はここ東京。総合プロデューサーの水谷孝次氏はその理由について、「今の東京は長引く不況により、戦争に匹敵するほどの大きなダメージを抱えている」と語る。Merryとは「楽しい・陽気な」という意味を持つ。そうした気持ちを笑顔が少なくなった都会人に広めたいと願い、展示場所には人目に触れやすい六本木ヒルズやカレッタ汐留が選ばれた。閉塞感の漂う東京を元気にしようというアプローチは、確かに笑顔を取り戻すキッカケを与えてはくれる。だが、“Merry”の作品は、満面の笑みを広げていこうとする試みとは裏腹に、「笑顔の欠如」という現実を浮き彫りにする。大都市という匿名性の高い社会環境では、他人に笑顔を向ける機会が極端に少ないからだ。
 ここでは、笑顔は美術品となり、オブジェと化して、観る対象となってしまっている。
写真原作者:日本大学3年 松岡佳奈子
2003年8月3日(日)13時頃
カレッタ汐留(港区東新橋)にて撮影

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