8.千鳥が淵の灯籠流し ―追憶の風物詩―

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700個の灯籠がボートから流される。向こう側には首都高速都心環状線の、もっと遠くには汐留シオサイトのライトが見える。森の暗がりの中、蝋燭の明かりが水面に揺れ幻想的な空気を漂わせる。千代田区と同区観光協会が、7/13(金)に区営千鳥ヶ淵ボート場で開催した「納涼の夕べ」の1場面だ。1958年に始まり、今年で52回目となった。
区はこれを観光行事と位置づけるが、どうして「灯籠流し(=盆の終わりの日に行う送り火)」なのか。しかも、それを新暦の迎え盆の日に行うのは何故なのか。
同じ日、写真の右側に隣接する千鳥ヶ淵戦没者墓苑(1959年竣工)では、同区主催の「戦没者追悼式典」が行われた。灯籠流しは、墓苑に眠る先の大戦による無名戦没者を慰霊するためのものだったのだ。そればかりか、追悼行事はこの後にも続き、8月15日の終戦記念の日に、天皇や首相も参列して武道館で執り行われる国主催の「全国戦没者追悼式典」へと連なっていく。「千代田の夏の風物詩」は、追憶へと橋渡しされるのである。
写真撮影者:日本大学4年 河村雄一
2010年7月13日(金)19時37分
千鳥ヶ淵ボート場(千代田区三番町2丁目)にて撮影

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