14.見えない姿 ―ニュータウンのアメンボキッズたち―

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 ここは多摩ニュータウンのとある公園。土曜日の午後なのに、子供たちの姿が見えない(でも、目を閉じて耳をすませば、だいぶ昔の子供たちの喚声がこだましてるよ。ほらね)。
 年代別の人口構成比がアンバランスなことで有名なまちではあるが、ここから子供が消えたわけではない。最近の子供たちはあまり外遊びをしなくなっているのだ。博報堂の生活総合研究所の調査(1997年3月)によれば、首都圏の小4から中2までの子供のうち、半数近くが塾に通い、大半が自分の部屋とTVゲームを持つ。彼らは自分の部屋(カプセル)にこそ居場所と安らぎを見出している。多様な価値観を認め、変化に機敏に対応しているように見えても、その実、どろどろとした人間関係には距離を置く。博報堂は世渡り上手な子供達をアメンボキッズと名付けたが、水上をスイスイ滑るアメンボ君はこの上もなくか細くて頼りない。肉体的、精神的なたくましさは、どんどんと削ぎ落ちていく。
写真原作者:法政大学3年 玉井雅人

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