10.東京、護ります ―都会の喋る「案山子」―

2005_10_東京、護ります.jpg
 2001年11月のアメリカ同時多発テロ、2004年3月のマドリード列車爆破テロ、そして2005年7月のロンドン地下鉄・バス同時爆破テロ。相次ぐ国際テロに危機感を抱いた警視庁は、主要な駅に警察官を「見せる警戒」として配置した。少し前は違和感を覚えたこの風景も、今では見慣れたものだ。写真は、そんな新宿駅構内の様子である。
 彼らは年中いるわけではなく、大事件発生が予想される際に姿を現す。「見える」存在によって社会不安をコントロールしようとする。その証拠に、テロが警戒された衆議院選挙後、姿を消した警官達が再び現れたのは、小泉首相が靖国神社を参拝し近隣諸国に緊張が走った翌日だった。しかし日常の通勤・通学に勤しむ人々は、彼らを気に留める素振りも無い。現状では、複雑な駅構内の便利な道案内役に成り下がっている(?)。
 日常風景に溶け込み違和感なく立ち続ける彼らの姿は、まるで近寄る鳥獣を脅して田んぼを護ろうとする「案山子」のようだ。「見かけ倒し」にならなければいいのだが…。
<写真撮影者:社会学科3年 荒井沙彌佳>
2005年7月20日(火)14時頃
京王線新宿駅構内(新宿区新宿3丁目)にて撮影

地図


大きな地図で見る

プロジェクト